デキリコの静寂と、香りの調律 ── 1月の夜に「自分を整える」ための儀式
答えのない時間を、自分に許す
1月。新しい1年が始まり、世の中が「目標」や「効率」といった言葉で慌ただしく動き出す時期です。
そんな、時だからこそ、私たちは無意識のうちに正解を求め、頭をフル回転させて疲弊してしまいます。働いて、働いて・・も聞きたくないです。
自宅に帰った時くらいは、その思考のスイッチを一度、オフにしてみませんか。
そのために私が提案したいのが、部屋に一枚の「謎」を置いてみることです。
デキリコの広場に、どんな香りを置くか
先日、一昨年開催されていたデキリコ展で手に入れた一冊の美術本を、何気なく目に留めたので、改めて開いてみました。

お気に入りの一冊。表紙を眺めるだけでも、すっと空気が変わるのを感じます。
デキリコの描く、誰もいないイタリアの広場や、不自然に伸びる影。 そこには「正解」も「物語」もありません。ただ、圧倒的な静寂だけが横たわっています。
ふと、この絵の前に立つとき、どんな香りが漂っていたら、より深く自分を整えることができるだろうか、と考えてみました。
例えば、乾いた石の匂いを思わせるような、少し冷ややかでスモーキーな香り。あるいは、古い紙やインクが混ざり合ったような、知的な落ち着きのある香り。 目に見える「静謐な謎」に、目に見えない「香り」を重ねることで、部屋の空気はより一層、日常から切り離された「聖域(サンクチュアリ)」へと深化していきます。
理解しようとする手を、止めてみる
シュルレアリスム(超現実主義)という言葉は難しく聞こえますが、要は「夢の中で見たような、不思議な景色」のこと。 意味を理解しようとしなくていい。ただ、そこにある静かな違和感に身を委ねる。
「これは何だろう?」と問いが浮かんでも、答えを出さずに眺め続ける。 この「正解を出さなくていい時間」こそが、情報過多な日常でこわばった心を、ゆっくりと解きほぐしてくれます。
暮らしの中に、美意識の複利を
Blue Coverがご紹介している作品の中にも、そんな「静かな謎」を秘めたものがいくつかあります。 それらは、パッと見てすぐに理解できるものではないかもしれません。
けれど、毎日ふとした瞬間に目をやり、そのたびに違う感情が湧いてくる。
そんな風に時間をかけて対話を重ねることで、あなた、私の内側には、時間が経つほど価値が増していく「美意識の複利」が積み重なっていく気がします。
今夜は少しだけ照明を落とし、お気に入りの香りと共に、答えのない世界を眺めてみませんか。
次回、1月後半は、冬の低い光が照らし出す「素材の体温」について。木彫や紙の質感が持つ、言葉にならない主張に耳を澄ませてみようと思います。



