何も足さないほうが、整うことがある── 空間はどこから静かになるのか #15
部屋を整えようとするとき、何かを足そうとしてしまうことがあります。
もう少し良くしたい。もう少し落ち着かせたい。
そのたびに、何かを選んで、置いていく。
けれど、あるときから、逆のことを考えるようになりました。
本当に必要なのは、これ以上「足すこと」なのかどうか。
置かないという選択
少しずつ、部屋の中のものを減らしていくと、不思議なことに、空間の感じが変わっていきました。
広くなった、というよりも、どこか軽くなったような感覚です。
視線がどこにも引っかからない。何かを意識し続けなくていい。
それだけで、部屋にいる時間が、少し静かになる。
それでも残るもの
すべてをなくせばいい、というわけでもないように思います。
何も置かれていない空間は、ときに、少しだけ落ち着かないこともある。
その中で、なぜか残るものがあります。
特別に選んだわけでもないのに、そこにあっても気にならないもの。
むしろ、それがあることで、空間が少しだけやわらぐようなもの。
用の美という視点

写真家・石田宗一郎は、2012年から街中のエアコンの室外機を撮り続けています。
室外機は、建物の裏や外壁の隅に押しやられた存在です。誰も飾ろうとは思わない。
むしろ、できれば隠したいもの。それを石田は正面から、ポートレートとして収めます。
撮影を始めた頃、惹かれていたのは室外機の機能的な形そのものだったと、石田は言います。
熱交換を行うラジエーター、大きなファン、それらを守る無骨な筐体。
装飾のない、ただ機能のためだけにある姿に「用の美」を見た、と。
「Outdoor unit Portrait No.5」は、青灰色のコンクリート壁を背景に、一台の室外機が静かに収められた一枚です。
画面の大半を占めるのは何もない壁。右上からわずかに差し込む青と赤の光だけが、誰も意図しなかった色彩をそこに与えています。
引き算の果てに、光だけが残った。その写真は、そういうふうに見えます。
部屋に一枚飾るとしたら、主張しすぎない。
でも、そこにあると、空間の感じが少し変わる。
「見せるためでなく、揃えるためでもなく、ただそこにあっても疲れないもの」として、この写真は静かに機能するように思います。
空間は、引き算で整う
空間は、足すことで整うのではなく、何を置かなくてもいいかがわかることで、静かになっていく。
その中で残っているものだけが、自然と意味を持ち始める。
見せるためでもなく、揃えるためでもなく、ただそこにあっても疲れないもの。
部屋を変えたいと思ったとき、何かを増やすのではなく、まず何を置かなくてもいいかを考えてみる。
そこで残るものがあれば、それがこの空間にとって必要なものなのかもしれません。
[作品情報]
Outdoor unit Portrait No.5 石田 宗一郎
カテゴリー:写真作品 サイズ:A3判 素材・プリント法:ファインアート紙、インクジェットプリント
販売価格:33,000円(税込) → Blue Cover「Photo Art」にて販売中
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このブログ「アートとくらす」は、アート作品を扱うBlue Coverによる連載です。
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