部屋を整えようとするとき、何かを足そうとしてしまうことがあります。

もう少し良くしたい。もう少し落ち着かせたい。

そのたびに、何かを選んで、置いていく。

けれど、あるときから、逆のことを考えるようになりました。

本当に必要なのは、これ以上「足すこと」なのかどうか。


置かないという選択 

少しずつ、部屋の中のものを減らしていくと、不思議なことに、空間の感じが変わっていきました。

広くなった、というよりも、どこか軽くなったような感覚です。

視線がどこにも引っかからない。何かを意識し続けなくていい。

それだけで、部屋にいる時間が、少し静かになる。


それでも残るもの

すべてをなくせばいい、というわけでもないように思います。

何も置かれていない空間は、ときに、少しだけ落ち着かないこともある。

その中で、なぜか残るものがあります。

特別に選んだわけでもないのに、そこにあっても気にならないもの。

むしろ、それがあることで、空間が少しだけやわらぐようなもの。


用の美という視点

写真家・石田宗一郎は、2012年から街中のエアコンの室外機を撮り続けています。

室外機は、建物の裏や外壁の隅に押しやられた存在です。誰も飾ろうとは思わない。

むしろ、できれば隠したいもの。それを石田は正面から、ポートレートとして収めます。

撮影を始めた頃、惹かれていたのは室外機の機能的な形そのものだったと、石田は言います。

熱交換を行うラジエーター、大きなファン、それらを守る無骨な筐体。

装飾のない、ただ機能のためだけにある姿に「用の美」を見た、と。

「Outdoor unit Portrait No.5」は、青灰色のコンクリート壁を背景に、一台の室外機が静かに収められた一枚です。

画面の大半を占めるのは何もない壁。右上からわずかに差し込む青と赤の光だけが、誰も意図しなかった色彩をそこに与えています。

引き算の果てに、光だけが残った。その写真は、そういうふうに見えます。

部屋に一枚飾るとしたら、主張しすぎない。

でも、そこにあると、空間の感じが少し変わる。

「見せるためでなく、揃えるためでもなく、ただそこにあっても疲れないもの」として、この写真は静かに機能するように思います。


空間は、引き算で整う

空間は、足すことで整うのではなく、何を置かなくてもいいかがわかることで、静かになっていく。

その中で残っているものだけが、自然と意味を持ち始める。

見せるためでもなく、揃えるためでもなく、ただそこにあっても疲れないもの。

部屋を変えたいと思ったとき、何かを増やすのではなく、まず何を置かなくてもいいかを考えてみる。

そこで残るものがあれば、それがこの空間にとって必要なものなのかもしれません。


[作品情報]

Outdoor unit Portrait No.5 石田 宗一郎

カテゴリー:写真作品 サイズ:A3判 素材・プリント法:ファインアート紙、インクジェットプリント 

販売価格:33,000円(税込) → Blue Cover「Photo Art」にて販売中

[あわせてご紹介]

石と森の静けさ GENBU アロマストーン × あきたすぎ精油セット

玄武岩のアロマストーン(ガラス容器付き)× あきたすぎ精油 5ml 

製造:堀江建材株式会社(秋田県大館市) 販売価格:5,500円(税込) 

→ Blue Cover「Art Products & Goods」にて販売中


このブログ「アートとくらす」は、アート作品を扱うBlue Coverによる連載です。
過去の連載(#1〜)はこちらからご覧いただけます。

関連コンテンツ