「ノッペンくん、こう寒くなると昼は“アレッ!”だね」

   「所長、湯気の立ったアレ!! ですね!! 師走ですからちょっと奮発で

「じゃ、早メシ、行こう!」所長の速さ,あっという間にもう階段を下り始めている。

  「所長、足下お気をつけて!!」 ノッペン君、慌てて追いかけながら心配そう。

シチュー専門店『エルベ』

11時30分、開店。行列客とともに二人勇んで店内へ。ホールスタッフの案内はテキパキだ。間口は広くないが、明るく瀟洒な店内は結構奥行きがある。カウンター数席と二人席が10卓ほど。厨房は初老の男性マスターと女性スタッフの厨房。もう芳香が鼻孔をくすぐる。

この日、所長はミックスシチュー・ランチ(2100円)。タンとビーフの〝良いとこ取り〟だ。 ノッペン君、久しぶりのタンシチューランチ(2450円)を奮発。オーダーを済ませたら、三種フリードリンク(お茶、ハーブティ―、デトックスウオーター)をセルフで注ぎに行く。二人、今日はデトックスウォーターを選ぶ。まずはノドを潤し、しばしメイン到着を待った。

  

白い湯気がもうもうと、、! これが、ココ、東銀座一帯で人気のシチュー・ランチだ。
歌舞伎座の真裏、銀座3丁目の路地裏の一画に長年居を構えるシチューの老舗「エルベ」。土鍋たっぷりの“熱熱シチュー”は、湯気の中から牛肉片がごろーり、ゴロリ、、、幾片も!!

コトラー所長とノッペン君、お腹をさすりながら大満足で店を出た。寒風も何のその!!!

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木挽町界わい、、歌舞伎座界わいで、“熱熱、あつあつ”ランチ!と言えばココも名が挙がる。

シチュー専門店『銀之塔』

シチューとグラタンしか、と言っていいほどシンプルなメニュー表の中から、この日所長は「ビーフシチュー」(2950円)、ノッペン君は「ミックスシチュー」(2750円)をオーダー。

お茶と同時につけ合せのきんぴら、なます、浅漬けの小鉢が出て、、待つこと十数分、威勢良く湯気を上げて、お待ちかねジュー、ジュー土鍋が到着。さあ、これだ!と箸を持つ手にも力が入る。煮えたぎるシチューには人参、玉ねぎ、ジャガイモ、サヤエンドウなど多種の野菜たち。主役の牛肉はお箸でいただく和様式。箸でスッと切れる牛肉の柔らかさ。口中でとろける食感。のど越しもなめらかと、さすが老舗の匠。でもココも値が上がって来て、、懸案解決の「今日は自分にご褒美です」とノッペン君。久しぶりの匠の技と味を噛みしめた。
昭和30年の創業、銀座の食の顔とも言われる一店だが、あっさり味で、やや物足りない向きもあるかもねとコトラー所長。この寒気の中、ハフっ、はふッ温まることは間違いないか。



「シチューではないけれど、あれも挙げたいね!」、コトラー所長たちおススメ店の逸品。

銀座『日東コーナー』

銀座の区割りが、隣り町の新富町へと突き出た一角、京橋公園東側。ここも銀座の一丁目だ。
奥のテーブルに案内された二人、定番ロールキャベツランチ(2,480円)をオーダー。先ずはたっぷりの野菜サラダ。特製ドレッシングの爽やかな酸味がうれしい。先ずは南瓜スープ。予約の!と10名近い若い男女ビジネス集団がやって来て一層賑やかな店内。気分も高まる。

やがて、店主イチ押しの一品、これぞ熱熱!!の逸品、評判の『ロールキャベツ』が到着。

湯気が立ち昇る鉄鍋の中、煮えたぎる熱々の具たち。まず大ぶりのニンジン角切りから慎重に口に運ぶと、これが実に甘い!加えてブロッコリー×2個も大ぶりだ。何より主役のロールキャベツがまたデッカい!! 横たわる巨塊を二つに切り分けると中から肉汁がジワリとろけ出して、、ウン、ウン、、これ!コレ! たしかに、75年余の老舗の味だと感動。仕上げはおススメ通りに残ったデミグラソースにあらかじめ取り分けた(追加もOKと)白米ライスを豪快に流し込み、混ぜ合えると、、、これは、また、ハヤシライスの完成だ。
しばし余韻の追い打ちに浸っていると、ぶ厚い二切れのリンゴが到着。絶妙のデザートだ。

二人のおススメ、熱々ロールキャベツの「日東コーナー」。シチューの範疇に入れたい!  

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心身ともに温まった二人、、、オフィスに戻ってしばし『シチュー談義』を楽しんだ。

「ノッペン君、他にシチュー・ランチって言えば、、そうそう、喫茶室「檜(ひのき)」とか」

  「ええ、歌舞伎座ビルの一階、木挽町通りにある店ですね!」

あそこの『シチュー・ランチ』(2,000円)も女性層に人気だね。観劇のついでの。

  「小ぶりな鍋ですが、けっこう具だくさんで、、、肉も野菜もバラエティでした。」

「観劇の幕間に、おしゃべりしながらのランチに、ちょうどいい量かな」

  「私にはちょっと量が、、、 」「でもよく煮込まれた肉片が、、ほど良く食べやすく」

・・・・そろそろ午後の相談者が見える時間、、二人の談義も「またね!」となって、、、

 銀座の裏まち、裏通り、、 いまも江戸の名残りをのこす町名「木挽町(こびきちょう)」を名乗る粋なまち、ココ、東銀座、歌舞伎座裏界わいの師走。寒風が吹きすさぶ日も増えた。

名だたる老舗や隠れた名店から庶民びいきの気軽な店まで、声高ではなく、粋に、品よく、控えめに潜むこの界隈。近年、グルメ通りとしてとみに評価を高めてもいるエリア。だが、そんな街にも通りにも、、やはり等しく、冷たく、値上げの波、価格高騰の風雪が、、、、

銀座一丁目の一画にある小さなビルの二階。小さなオフィスの、小さな企画会社の、二人。
真剣『ランチ道』に励む二人だが、わずかここ一、二年、二割も三割もランチ代が上がったことを実感する。円安効果のインバウンド活気が街を照らす一方で、輸入食材、資材の急騰、加えて人件費のさらなる高騰が招くあらゆるモノの値上げ、また値上げ、、、、

でも、「食」は基本。
ランチは「糧」、そしてランチは「ロマン」、ランチは「文化」、、、『ランチ道』探求の二人、飽きず、めげずに明日もまた、『ランチ道』探究の小さな旅に、師走の風の中、向かいます!!

執筆者:弓土 一也(ゆみと いちや)
キャラクターイラスト(ネコペン、ノッペン):独楽里(Komari)

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