自分を好きになり、愉快に生きるには身体からのアプローチが基本になる。そこで
この章では、そのための具体的な身体技法について説明しているが、さらに続けるね。

身体技法2

溶け合い動作法

溶け合い動作法とは、文教大学の今野義孝先生が開発したボディワークだ。

脳性麻痺や自閉症に効果があることが確認されているが、最近では不安やうつにも応用されている。
ペアで実施するので、タッチし合うお互いの手の温かさが感じられ、ほんわかふんわかの溶け合い感に
包み込まれ、不安や孤立感から解放される。

ちなみに、不安やイライラを緩める方法としては三つあると言われている。

# 一つはリラクセーション

これは分かりやすいよね。不安やイライラよりリラクセーションによる気持ち良さのほうが勝ればOKになる。

# もう一つは自己表現。

一人で問題を抱え込んで誰にもどこにも吐き出せないと、どこかで爆発するのは目に見えている。
友人や家族やカウンセラーに本音を表現すること、
また絵や音楽や踊りや文章で感情を表現することで、不安やイライラは収まっていく。
また、日本人は苦手だが、ストレスを与えた相手に対してしっかり冷静に自分の気持ちを表現する
アサーションもトレーニング次第では大きな効果を発揮してくれる。

# そして三つめはスキンシップだ

親しい人とのスキンシップはリラクゼーションや自己表現の要素も含むので、とてもとても大切だ。
がんで入院中、看護婦さんに手を握ってもらっただけでも痛みがずいぶんと和らいだ経験がある。
場合によってはロキソニンやモルヒネよりスキンシップのほうが妙薬になりうる、
なんて貴重な体験を教えてくれたから、がんも捨てたもんじゃない。ありがたや、だね。
実際、私がスキンシップの大切さを実感したのは3.11の後に名取市の避難所に出向き、
ペアを組んでもらってこの溶け合い動作法を実施してもらった経験からだ。
お互いに優しく触れ合うことで、文字通り冷え切った体も心も段々と溶け合っていき温かさが
ほんわかと蘇ってきた。避難所生活で不眠や不安で生活リズムが崩れ、孤立感を抱えていた被災者には
温かいスキンシップが何よりのサポートだったのだろう。
多くの人に喜ばれ、私が去った後も自主的にこのワークをしたという。

<溶け合い動作法>

1)ペアを組んで、一人がもう一人の人の後ろから首まわりに両手を置き、
  息を吐き「ピタッ」と言いながら真下に5秒ぐらいかけて圧を加えていく
  (やさしく、包み込むような感じで)
2)両手は密着させたまま、「フワッ」と言いながら、その圧を緩めていく
3)受け手は、呼吸と掛け声を合わせて、一緒に声を出していく
4)3分から5分継続し、ペアを変わる
5)身体のさまざまな部位でこの方法を行う

難しいスキルもいらず、誰にでもできる簡単な方法だが、する方もされる方も
とても気持ちがリラックスできる。この方法は、どの部位でも可能だ。
たとえば、イライラや怒りで頭がきりきりしたり、重いときは、頭の側面に両手を当てて
(頭を両手ではさんで)「ピタッフワッ」をする。胸が文字通りむかつくときは、
胸の付近と胸の背中付近をはさんでの「ピタッフワッ」をすればよい。
何だか暖かいミステリアスな愉快感覚に包まれて、気分よろしだ。

<頭への溶け合い動作法>

1)ペアを組んで、一人がもう一人の人の後ろから頭の左右の側面に両手を置き、息を吐き「ピタッ」
  といいながら5秒ぐらいかけて圧を加えていく(やさしく、包み込むような感じで)
2) 両手は密着させたまま、「フワッ」といいながら、5秒ぐらいかけてその圧を緩めていく
3)受け手は、呼吸と掛け声を合わせて、一緒に声を出していく
4)3分から5分継続し、ペアを変わる

胸がもじどおりむかつくときは、胸の付近と胸の背中付近ををはさんでの「ピタッフワッ」をすればよい。

<胸への溶け合い動作法>

1)ペアを組んで、一人がもう一人の人の胸の付近と胸の背中付近をはさんで両手を置き、息を吐き
  「ピタッ」といいながら5秒ぐらいかけて圧を加えていく(やさしく、包み込むような感じで)。
2) 両手は密着させたまま、「フワッ」といいながら、5秒ぐらいかけてその圧を緩めていく
3)受け手は、呼吸と掛け声を合わせて、一緒に声を出していく
4)3分から5分継続し、ペアを変わる

<脱感作ワーク>

1)ストレスでイライラや怒りを感じてる際に実施する。
  まずは、感情の度合いを数値化する(0~10で最悪が10、問題なしが0なら、今の状態は?)
2)親しい人に首から背中に両手を当ててもらい、呼吸を合わせながら息を吐き「ピタッ」と
  いいながら押してもらい、「フワッ」といいながら、その圧を緩めてもらう
3)受け手もイライラや怒りを感じながらでいいから、呼吸を合わせながら
  「ピタッ」「フワッ」と声を合わせる
4)5分ほど続ける
5)再度、今の感情の度合を測定し、 違いを感じる

イライラや怒りを感じている本人が身体を動かすわけではないが、相手の温かい手の感触、
2人で声を合わせる一体感、筋肉の緊張がふっと緩む感覚が、イライラや怒りを小さく軽くしてくれる。
ただし、スキンシップが必要なので、ある程度信頼関係がある、親密感のある相手にしてもらう必要があるのは言うまでもない。

愉快に生きる重要なポイントの一つは、信頼できる場でのスキンシップ、心と身体が感じるほのぼのとした暖かさだ。

もちろん、この溶け合い動作法は、ちょっと葛藤のある夫婦間や親子間で実施すると効果絶大だ。
スキンシップを忘れたセックスレスの夫婦には愛の天使がくれた宝物になるかもしれない
(何と大袈裟な?と笑うなかれ。40,50代の夫婦の7割はセックスレスだというのだからね)。

     

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