第2章 愉快に生きるための身体技法 1 その⑴

自分を好きになり、愉快に生きるには身体からのアプローチが基本になることを述べてきた。
この章では、そのための具体的な身体技法について説明していこう。
<漸進的筋弛緩法>
まず、一番簡単に実践できて、かつ効果を感じやすい技法が漸進的筋弛緩法だ。
文字通り、身体の筋肉を次から次へと緩めていく方法だ。心と身体は繋がっている。
いくら心だけで「リラックスしよう。緊張を緩めよう」と努力しても、上手くいかない。
却って緊張が高まってしまうという逆説が起こる。身体も心もある意味、天邪鬼だからね。
そこで、真打、逆説療法の出番だ。
むしろ身体をわざといったん緊張させてから一気に力を抜くことで、
自然と気持ちもリラックスし、不安やイライラから解放される。

ここでも、いったん不愉快な緊張状態を極めることが必要という見事な逆説療法が成り立つわけ。
おもろいね。身体の各部位で、順番にこの方法を実施するのが漸進的筋弛緩法だ。
また、首から脳幹にはリラックスに関係する副交感神経の束が集まっているので、
漸進的筋弛緩法にプラスして首回しを実行すると、より効果があがる。
・漸進的筋弛緩法
- 椅子に浅く座り背筋を伸ばす。
- 利き手で軽くコブシを作る。
次いで、息を吸いながらこのコブシにゆっくりと力を入れていき、ぎゅっと握り締める。
さらに肘から肩にかけて力を入れていき、利き腕全体を緊張させる。
そのまま10秒前後息を止め、力を入れたままにしておいて、この緊張している感じを十分に味わう。
そして、ストンと一気に力を抜く。 - 反対の手で軽くコブシを作る。
同じように、ぎゅっと握り締め、肘から肩にかけて力を入れていき、腕全体を緊張させ、
そのまま10秒前後息を止めストンと一気に力を抜く。 - 両肩を思いきり耳まで上げて力を入れ(10秒前後)、力を一気に抜く。
- 左右の肩を後ろに引き、両方の肩甲骨を合わせるような方向に力を入れて(10秒前後)、
ストンと力を抜く。 - 首を左に倒す。首の両側が緊張している感じを十分に味わい、ストンと一気に力を抜き、
ぼんやり意識を首に向け、緩んだ感じをしばらく味わう。 - 今度は首を右に倒し、同様に、緩んだ感じをしばらく味わう。
- 顔全体に力を入れる。眼を強くつむり眉の間に皺を寄せ、コメカミを噛み締め、
力が入っているのを感じ続け(10秒前後)、ストンと力を抜く。 - 歯をギュッと食いしばって、口の奥まで力が入っているのを感じ(10秒前後)た後、
ストンと一気に力を抜き、ぼんやり緩んだ感じをしばらく味わう。 - 鼻から息を吸いながら胸を膨らまし、膨らみきったところで息を止め力を入れ、
力が入っているのを感じ続ける(10秒前後)。ストンと一気に力を抜く。
ぼんやり意識を胸に向け、緩んだ感じをしばらく味わう。 - 鼻から息を吸いながらお腹を膨らまし、膨らみきったところで息を止めて力を入れる(10秒前後)。
ストンと一気に力を抜く。 - 右足の指を地面を鷲づかみするように緊張させ、次いで足首、ふくらはぎから太ももまで力を入れる。(10秒前後)。
ストンと一気に力を抜く。 - 左足の指を地面を鷲づかみするように緊張させ、同様の緊張と弛緩を繰り返す。
- 身体が完全にリラックスしている解放感を楽しむ。

しばらく漸進的筋弛緩療法を続けていくと、自分の体に対する感覚がどんどん敏感になってくるはずだ。
自分の身体と友達になれた感じがしてくる。
時間がたっぷりある時は、各部位を2,3回づつ実施しても良い。
時間がない時は、緊張している部位だけでもOK。
日本人は肩こりが多いので、4)と5)の肩上げ、肩甲骨合わせは特に効果があるので、
この部位だけ実施しても十分な効果が感じられるだろう。
・簡易版筋弛緩法
- 現在の緊張を0~10で数値化する(10が最悪)
- 両肩を思いきり耳まで上げて力を入れ、力が入っているのを感じ続ける(10秒前後)。
力を一気に抜く。 - 両手を組み、手の平を頭の後ろにそえる。
両肘を前に。頭の後ろと両手で押しくらまんじゅうをする。
さらに左右の肩を後ろに引いて、両方の肩甲骨を合わせるように力を入れる。
身体の後ろ半分に目いっぱい力を入れていき、力が入っているのを感じ続ける(10秒前後)。
ストンと力を抜く。 - 両肩を思いきり耳まで上げて力を入れる。そのまま、両手を思い切り握る。
両足を地面を鷲づかみするように力を入れる。
息をどんどん吸ってお腹を膨らましグッと力を入れる。
最後に目と口をくい縛る。全身に力が入った状態を5秒感じ続ける。
ストンと一気に力を抜き、全身が緩むのを感じる。 - 再度緊張を0~10で数値化する。
おそらく、どんなに激しい感情も筋弛緩法を実施すると、数値が半分ぐらいに減るはずだ。
ゼロになる必要はない。
半分近くになって抱えられる大きさになれば、静かに座って感情に気づき認めてあげる余裕が出てくるからだ。
・首回し
目をつぶり口をぽかんと開け、首の後ろが柔らかくなるように、首を前後左右、自由に回す。
首の後ろにはリラックスに関係する副交感神経の束が集まっているので、
首をたっぷりと回すことで副交感神経が活性化し、
首・喉に滞っていたエネルギー・血流が全身を流れるようになりリラックスできる。
最低でも2、3分は続けよう。
漸進的筋弛緩療法と首回しはセットで実施すると効果が高い。
簡易版や肩上げと肩甲骨合わせだけでも十分効果が感じられる。
一瞬芸の世界、特効薬だね。
相談に来る学生の中には、緊張しいでプレゼンが苦手、就職や進学の面接のときに上がってしまい、
しどろもどろの大乱痴気に陥ってしまう、という相談が結構多い。
この簡易版漸進的筋弛緩法を教え実践してもらうと、かなりの割合で改善が図れたから、ありがたやだ。
愉快に生きるための基本なので、それを妨げるようなシチュエーションではこの方法を実践してみるのが一番手っ取り早い。
手軽にできて身体と心がふんわか柔らかくなるのが実感できる。
もちろん、口元を緩めて微笑みながらを忘れないようにね。
身体との親密感、仲良し感がたっぷり味わえるはずだ。
