先日浅草でどら焼きの亀十を訪ねた後、そう言えばと書棚から一冊取り出し、読み返した。

パッとしないどら焼き店だったが、ある日

映画にもなったのでご記憶の方も少なくないだろう。ドリアン助川著『あん』。樹木希林さんの名演で少し話題ともなった。舞台はパッとしないどら焼き店。やる気なしの二代目若主人の店に強引に押しかけ、とうとう働き始めた「謎」の老女。だが、その餡作りのすごさ、すご腕!! そして、そして、、その生い立ちは、、、 
読み進むうち、知らず知らずのうちに頬から静かに流れる物を感じる作品となる。今回も。

ドリアン助川氏とは少しだけ接点があった。が、それは氏の若いころのこと。叫ぶ詩人の会リーダーとしてモヒカン刈りが印象的なロッカー(ロックの詩人!と個人的には)だった。その後、小説へと進むが、彼の作品はいつも声高でなく、とても細やかな『物語』を紡ぐ。そしていつも心が動かされる。静かに、深く。

ミニ冊子『もなか羊羹』が気になった。

ある日、某書店で『もなか羊羹』なるミニ冊子を見つけ、気になり過ぎて買ってしまった。タテ10.0㎝×ヨコ14.5㎝×厚さ0.4㎝の超薄本だ。タイトルからは、一体どんな内容なのか、皆目見当もつかない。が.〝あん脚〟旅人としてここで買わねばきっと後悔するぞ、と。定価は1100円+税だ。この価格、ナリは小と言えど侮れないハズ。おそらく。で、つい。

現場は下北沢のB&B書店。小田急線地下化による線路跡の再開発で生まれた回遊庭園の一画にある。全国で書店が激減する一方で、独立系書店、セレクト型書店が静かに増殖中だと聞く。本への強い思いを持つ人たちが各地で書店を起ち上げ、互いにネットワークを紡ぐ。本好きとしては実にうれしく頼もしい。この店も前から気になり訪ねた。ぐるり店内を回る中、〝軽出版社〟なる破船房発行のミニ冊子群発見!!そこに『もなか羊羹』もあった。

なにしろあの仲俣暁生氏の著書だ。オモシロクナイワケがナイ。なるほど!が幾つもあった。因みに、『もなか羊羹』とはJR中央線の某駅前商店街にある和菓子店のことと知る。

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さてさて、ならばと、急に「もなか(モナカ、最中)にこだわってみたくなった。一説にモナカこそ、その店の評価をはかる目安だと聞いたことがある。先日も書店でめくったエッセイ本に、オモシロこだわりで知られる〝みうじゅん〟こと、イラストレーターみうらじゅん氏が大のモナカファンだとも書いてあった。そうなのか。モナカは、そうなのか。

『もなか』あんぎゃ で 杜の都のアーケード街へ

もなか」といえばどうしても、仙台名物白松がモナカ』は外せないし、ゆずれない。旨いか否かは個人差もある。もちろん気候や体調でも随分異なる。舌で味わうと共に、脳内でも味わう。そうして心に深く、記憶に強く残る心地よい体験も「旨い」の基準となる。  


 仙台土産と言えば。最近の売れ筋は『萩の月』と『ずんだ餅』と聞こえてくるが、物ごころついたころから手土産のうれしい代表格は、ズッーと和菓子の『白松がモナカ』だった。モナカの種)との見事な調和。この味わい深さこそが魅力だ。モナカ種の精米は自社の田圃で収穫した米にこだわり、四種の餡(あずき、胡麻、しろいんげん、栗)にこだわり、それらが一体となった絶妙な調和。これ!、コレコレ!!口に出る。あっと言う間の2個。

 年に数回、帰省の際には必ず「白松がモナカ本舗」の仙台・一番町店を訪ねる。
七夕祭りで知られる仙台の〝表の顔〟東一番町、また〝夜の顔〟国分町にもほど近い大アーケード街の一画で、その店はいつも控え目で、変わらぬ端正な佇まいで迎えてくれる。一番好みは「中型もなか」だが、手土産には軽くて多種の餡が楽しめる「小型」版も好い。銀座のデパ地下でも週一、二度の入荷があり、見つけたら必ず手に取ることにしている。

 かつて、仙台駅の土産コーナーにもう一種、「三色最中」なる「もなか」もあった。一個の扇型の中に〝小豆,ごま、白いんげん〟だったか、、三種の餡が三等分で詰められており、ちょっとドキドキ手にしたものだった。残念なことに一年ほど前から姿を消してしまった。

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 頂戴することも多い「もなか」には、餡と皮を別々にしっかりと密封してあるものもある。皮の風味と鮮度を保ち、出来立ての味を楽しんで頂こうというものだろう。が、好みではない。一体化していてこそ。外皮と餡の日毎の味の変化、触感の微妙な違いの妙もまたちょっとどきどき、ちょっとわくわくの一つだと、旧い人間にはそんな思いもあったりする。

余談だが、つけ麺も好まない。こだわりのタイミングで提供される麺と汁のほど好い関係。冷めてゆく汁に付けるのではその旨味も半減しないか、、、 杞憂?、余計な心配、か。

『もなか』あんぎゃ で 丹沢を望む首都圏ローカル駅へ

手土産でいただいた和菓子に『連山もなか』という一品があって、コレがとても気に入った。丹沢連山を望む神奈川県海老名市内の和菓子「山口屋」とあったが、初めて聞く名前だった。大納言と栗入り白あん。見た目も、手触りも大ぶりだ。皮はパリッと、餡はたっぷり。ほど良い甘さと滑らかな舌触り、そして心地よい口どけ。これは、これは、幾つでもイケそうだ。

以来、興が湧いたままだったが、先日、お隣り本厚木のイベント帰り、思い切って道草した。
 初代考案、名物『連山もなか』の故郷・和菓子「山口屋」へ。JR相模線・厚木駅へ。
かなり大きな店だ。昭和12年の創業。人気の『いちご大福』などなど、地元ではかなりの有名店のようだ。丹沢の山々を望む地で、地元愛の逸品を戴く口福。愉しい寄り道だった。

『もなか』あんぎゃ で 吉祥寺・ハモニカ横丁へ

 『もなか羊羹』に登場の店は知る人ぞ知る吉祥寺の小店「小ざさ」だった。戴くこともあるが、自分でもと先日午前11時。何年ぶりかに店へ向かった。駅からはほんの数分だ。吉祥寺名物〝ハモニカ横丁〟の、細く、狭く、長い、名物通りを直進。その抜けた先にある。

数名の列に並び、店先にある『もなか』の五個入りを注文。多くの客が五個か十個の注文だ。限定数の〝噂の羊羹〟は早朝から並んでこその一品。この時間、もちろん姿かたちは皆無だ。限定数売れ切れた後は『もなかだけ販売となる。それでも列が続く。こうして数十年もだ。


帰りは少し遠回りして小さな公園へ。小ぶりサイズのカワイイ〝もなか〟をペットボトルのお茶とともに味わう。つぶ餡一個だけのハズが、つい白あんまで。あっという間だった。ほどよい甘さの餡と上品な外皮のベストマッチング。やさしい口どけの余韻が、後を引く。軽出版の冊子、『もなかと羊羹』の世界をあん脚。一冊の本から『もなか』旅を満喫した。

和菓子の中の和菓子とも言われる『もなか』。全国各地に「名店」がありますよ!とも聞く。

あなたの一押し『もなか』もぜひ、教えていただけませんか。とっておきの思い出の


庵 日和(いおり びより)
編集者 裏まち裏通り旅人(りょにん)
北国の小さな城下町生まれ。
ラジオ・テレビ、WEBサイト等で
企画・制作・広報PRを手掛ける。
歩く・見る・浸かる・食べるを趣味
に、小さな物語を採集、編集。

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